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教室内空気汚染物質について      

1.学校環境衛生の基準改正(H14.2.5)

 1)新規追加項目
 ア、ホルムアルデヒド    100μg/立方m(O.08ppm)以下であること。
 イ、トルエン        260μg/立方m(0.07ppm)以下であること。
 ウ、キシレン        870μg/立方m(0.20ppm)以下であること。
 エ、パラジクロロベンゼン  240μg/立方m(O.04ppm)以下であること。
 2)上記ア、イの事項ついて行い、特に必要と認める場合は、ウ、エについても行う。
 3)検査法について記述(省略)
 4)教室内の空気は刺激や臭気がないこと。

2.追加事項の背景
 1980年代欧米に、頭痛・めまい・吐き気・集中力散漫・疲労感や原因不明な皮膚
 症状などがビル居住者に出始めた。これは近年日本で巷にいわれるシックハウス症候
 群であり、新築の高断熱・高気密の住宅に増加して来た。

  当初はMCS(多種類化学物質過敏症)と命名された。
 原因は各種あるようで、現在は1つの原因でなく、各種の原因が複合して起こると考
 えられており、接着剤・ペイント・木材・ワックス・防炎処理剤・防虫・化学繊維・
 壁・カーペット・文具・教材その他に含まれる化学物質などが挙げられ、原因物質を
 特定することは非常に困難である。

 このため文部省は、平成12年から全国の学校を抽出して上記1)などを検査し、実際
 に一部学校で検出されたことを踏まえ、この基準設定に至った。幸い仙台市において
 は、仙台市教育委員会の協力の下、仙台市学校薬剤師会が全国に先駆けて平成8年よ
 り、簡易法ではあるがホルムアルデヒドの測定を開始した。その結果からも、ごく僅
 か(基準値内)ではるがホルムアルデヒドが検出された。

3.今回指定のアからエの有害性
 ア、ホルムアルデヒド
   ホルムアルデヒドはHCHOの単純な化学式を有する水状の物質で、常温でわず
  かづつ蒸散する。酸化され蟻酸に変化する。ホルムアルデヒドや蟻酸は強い起炎物
  質であり、粘膜・皮膚に炎症を起こす。そのため、室内空気中にわずかに含有した
  ホルムアルデヒドは直接に目や、呼吸によって呼吸器や肺にたどり着き、直接に炎
  症を起こす、あるいは連続して刺激することでアレルギーを生じる原因となる。
 イ、トルエン・キシレン
   トルエン・キシレンは、共に芳香族の有機化合物で、常温では液体である。有機
  溶剤のシンナーの成分でもある。脂溶性・揮発性が強い。原液は、脂溶性による皮
  膚への刺激や吸入・皮膚からの吸収による肝・腎などの臓器の炎症や脳への影響が
  考えられる。さらに、少量でもこれらの蒸散した気体を連続して吸入した場合、化
  学物質アレルギーや気管支炎などのほか、肺・腎・肝などへの影響が生じる。
 ウ、パラジクロロベンゼン
   塩素を構造に含む芳香族の有機化合物で、常温では固体であるが、徐々に直接揮
  発し、防虫・弱い殺菌効果があり、そのため衣類や便所などの防臭・防虫剤防虫剤
  として市販されている。変原異性(大腸菌等の細菌に働き変性させる働き)がいわ
  れ、直接・間接に摂取することで、肝・腎などの臓器の炎症や脳への影響が考えら
  れる。

4.今回指定のアからエの予想される発生原因
 ア、ホルムアルデヒド
   化学物質を連結する働きにより、各種接着剤の重要な成分として含まれ、合板
  (コンパネ・ベニヤ板等)・壁剤・床などの接着の際に使用されたものから蒸散さ
  れると考えられる。そこで、新築・増改築の校舎には発生することが多い。
   また、教材に使用される合板などから発生する。 予想される発生箇所は、新校
  舎・図工あるいは美術授業時・コンピュータ室・図書室などである。
 イ、トルエン・キシレン
   各種油脂を溶かす性質から、溶剤として利用される。そのため予想される発生箇
  所は、アのホルムアルデヒドと同様である。
 ウ、パラジクロロベンゼン
   この物質は、本来学校には存在することはなく、殺菌防臭剤として便所に使用す
  るか、あるいは児童生徒・教職員が自宅で使用していた防虫剤が、衣服に付着して
  学校に持ち込まれることが予想される。

5.対 策
  今回指定された4種の化学物質は、一部を除き建築物そのものから発生するもの
 で、それも持続的にわずかずつ長期にわたり出てくる。それに加え予想される物質は
 前出の4物質だけでなく、殺白蟻剤やワックス剤・殺菌消毒剤・殺虫剤その他に含有
 する多くの化学物質があり、その中で我々は生活をしていること考慮する必要があ
 る。そのため、有効な・効果的な対策は今のところはない。空気換気
  あえてあげるとすれば常に換気を行い、平行して原因
 と思われるもの或いは原因と予想される製品を除去する
 ことである。さらに、4指定物質の検査を行うことは大
 切であるが、換気という事を考慮したとき簡単なC02
 の測定値も参考になる。
  また、木炭がガスなどを吸着する働きが強い事に着目し、教室の四隅に置く・吊り
 下げるなども1つの方法である。今後、有効な手段や方法が発見・開発されるとは思
 うが、換気だけでなく、学校に原因と思われる物を持ち込まない等、学校の周辺の状
 況を含め平素から注意を払う必要がある。

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