現場で聞かれた質問にどのように答えるか、以下を参考に
◆プールで鳥が死んでいた (スズメ、コウモリ)
A:まず、保健所に連絡した。「鳥インフルエンザ発生から4ヶ月以上経ってい
るので通常通りの消毒殺菌をして下さい」との返事をもらう。学薬は学校に
対して、その日はプールに入れないで、プールサイドも塩素消毒(腰洗い層
の水をジョウロに入れ散水しながらブラシで洗浄除去する)するよう指示。
一方、プールは終了後、残留塩素濃度を少々高めにし、充分撹拌させ、一夜
放置すれば、プール水の1/3入れ替えは不要。学校側から再検査を要望され
た。再検査は、トリハロメタン以外はすべてやると市教委との契約なので、
特に追加検査料も無しで再検査を行ってもかまわない。
◆一般細菌だけが出たという学校はどうするか
A:2回目の検査は合格したが、また出たという事例もある。通常の残留塩素濃
度で一般細菌だけが陽性というのは考えられない。取水法が悪いのか(バケ
ツに一旦くんでから採水容器に移していた過去の例もある)、残留塩素の測
定法がいい加減のか(残塩の測定器の採水管が透明でなく、くもっている採
水管だった事例もある)が考えられる。
pHが基準範囲内で無い場合は、殺菌作用少ない結合型塩素が多く存在し、
それを測定することにより残留塩素が基準内であるから殺菌作用は十分と
思っている場合がある。
また、残留塩素が少ない時に顆粒剤を投入したが、良くかき混ざっていな
かったということもある。顆粒剤を投入した場合、最低30分は放置する必要
がある。
◆墨汁がプールに投げ込まれた
A:最初、プールが黒くなっているので何が投げ込まれたのかわからなかった。
どういうものが投げ込まれたか、医薬品試験センターで調べてもらおうと
思ったが、1品目毎の検査になるので莫大な金額になるので無理だとわかり
あきらめた。トリハロメタン以外のプール検査項目を行う。市販金魚を用い
た毒性検査も有効である。
◆ハクビシンが糞をする
A:食べたカスなどもあった。プールの水を入れ替えて欲しいと学校側から要望
があった。学校薬剤師から要望があれば教育委員会ではプール水の入れ替え
を許可するようだ。
◆塩素化イソシアヌール酸には期限が書かれていないがいつまで使用できるのか?
参考:(原料)+ Cl2=塩素化イソシアヌール酸(結合残留塩素)という。
A:これは乾燥状態で冷暗所保存すれば長時間安定です。しかし、有効期限は1
年位と記載されているはずです(製造工場または販売元に確認が必要)。
◆ネズミの駆除法
A:殺鼠剤には即効性薬剤と遅効性薬剤がある。アンツウ(αナフチルチオウレ
ア)よりもクマリン系薬剤(出血毒)はネズミに警戒を与えないので、有効
であるとされている。しかし、5日間以上連用することが必要である。特定
毒物のモノフルオロ酢酸Na、毒物の黄リンもあるが毒性の点から扱いが面
倒。
捕鼠:ネズミ取りのトラップを仕掛けて捕らえる方法で、トラップの種類や
エサの種類を選ばないと効果が少ない。また後始末が子供たちに悪影
響を与える恐れがある。
A:ネズミの死骸からは、ダニが多数逃げて出てくるので処理をすばやくやらね
ばならない。しかし、ネズミホイホイのような粘着式ネズミ取りの場合は、
粘着剤にダニもくっつくので衛生的に処理できる。
◆トイレが臭うのだが
A:浄化槽があるかどうかも不明であった。男子トイレはタイマーで水を流すよ
うになっていたので、それを休み時間終了直後に設定してみてはと指導し
た。換気扇を付けるのもいいのではと助言した。
このほか、特に暑い夏期の昼休みは、休みの中間点で一度流水する方が良い
(気温が高いとアンモニアが気化しやすく悪臭の原因となる)。
◆新任学薬に対するフォローは
A:ブロック長が現場で測定する際に、呼びかけ説明しながら測定し、確認のた
め新任学薬にも同様にやってもらう(一度に全ては無理)。
なお、1から2年後には、6年制の薬学教育課程の中で、学校薬剤師の業務
に関連した講義内容とその実習が実施されるようですので、その際は、学薬
担当者が学生と新任学薬を対象として指導したい。
◆夜中に金網が壊され、プールに侵入した形跡があった
A:第1回目の定期検査と同じ項目で水質検査をして対処した
◆屋上プールでプールサイドに鳥の糞が散見された。3点のうち1点で大腸菌陽性
A:プールサイド清掃とプール内浮遊物除去およびプール水の1/3入れ替えの後水
質検査の再検査でOKとなった。鳥の糞などを見つけたら、腰洗い層の水を
ジョウロに入れ散水しながらブラシで洗浄除去する。一方、プールは終了
後、残留塩素濃度を少々高めにし、充分撹拌させ、一夜放置すれば、プール
水の1/3入れ替えは不要。
◆プール水のpH値の件で再検査一件
A:プール水を1/3入れ替えでOK
◆腰洗い槽の不使用について 対応法は?皮膚炎発症の可能性があるため使っていない
A:仙台市学校薬剤師会のホームページの学校薬剤師のサイトを参考にして下さ
い。腰洗い槽は使うことが原則である。ただし、皮膚炎を起こす恐れのある
児童・生徒は十分シャワーで全身、特に下腹部を洗わせる。
◆着衣水泳の教室をしたいのだが注意すべき事はあるでしょうか?
A:残留塩素濃度を少し高めにすること。くつの裏の砂をきれいに落とすこと。
中も良く洗ってから使うこと。着衣水泳をやった後は、プール水が濁ること
が多いので、残留塩素濃度を高めに保ちながら注水し、オーバーフローさせ
て濁りをとります。
理想を言えば、着衣水泳を計画的にプールシーズン最終週に実施すれば、普
段の服装(くつ)のままで可能となります。
◆DPD検査試薬の1液がなくなったので顆粒剤だけでやっているのですが良いのでしょうか? (1液とは緩衝剤の事と思います)
A:正確に遊離残留塩素を測定するためには、測定試薬は指示されたものを指
示されたように使って下さい。
リン酸bufferがないと安定した呈色が得られません。DPDによる吸光光度
法は飲料水の残留塩素(0.1mg/l以上)が低いため、比色法よりは吸光光度法が
使われる。プール水は(0.4mg/l以上)なので比色法で十分(吸光光度法が間違
いではないが)
◆学校のプールから帰ってきたら気持ち悪いと子供が言う。先日まで過敏な上の子だけだったが、最近は下の子も気持ち悪いと言うようになった。スイミングクラブのプールから帰ってきた時はそういうことは言わない。プールの水が悪いのでは?
A:プール水は、遊離残留塩素も規定以上あるし、臭気もなく正常です。考えら
れるのは、該当校の入水人数が少ないので水温が上がらず、体が冷えすぎ
た。また、入水時間帯、例えばお昼前にプールに入って体力を消耗し、急激
に低血糖を起こした可能性もあります。プールに入る前の食事の内容によっ
てもプール内での運動後に気持ち悪くなることもありますから、学校のプー
ル水が悪いとは決めつけられません。
◆pHが高く一般細菌数が規定以上出てしまった
A:pHの上昇する原因は、入水者が多いのに注水せずにプールを使用した事
が考えられます。注水してオーバーフローさせ残留塩素を少し高めにして、
再検査はpHをもう少し下げた状態で遊離残留塩素が充分ある状態でやると
合格になるはずです。
参考:pH7.5位でHClO(非解離型残留塩素;殺菌力が強い)とClO-(次亜塩素酸
イオン;殺菌力弱い)が1:1、それよりも低いpH7.0で(6:4)、pH
5位で(10:0)となることからpHをもうすこし下げた状態で再検査しま
す。
◆学校でプール使用期間中にもかかわらずプール改修工事をしているため、10日間くらい プール検査ができなかった。これは昨年も別の学校で何校かあったと聞いている。シーズンを避けて工事できないものだろうか?
A:学校と担当薬剤師が日時を調整し、工事後に検査を実施した。
シーズンを避けて工事することが、学校の安全(特に来年4月1日以後は、
学校保健法改め学校保健安全法に改称)がより一層重要となります。
◆歯垢を染める薬剤とDPD試薬を間違えたがどうすればいいか?
A:飲み込みはしないので、医療機関でさらに診療を受けなければならないか
どうかは学校医に相談してください。
口に入れる物とプールの検査に使う物を同じ場所に保管することが基本的に
間違っている。その後の管理に対する対処法を文書で学薬に提出してくださ
いと申し入れた。
参考:DPDが体内に入った場合、どのような弊害があるか、学薬として学校側に
提出すべきである。DPDは、オルトトリジン(発がん性)よりは毒性が弱
いと云われているが、安全とはいいがたい(毒性はあります)。
参考:DPD(N-Nジエチル-p-フェニレンジアミン硫酸塩)のラット経口のLD50は
195mg/kgです。DPD試薬1回分に含まれるDPDの量は大体4から8mgだと
考えられます。
小学生児童の平均体重6歳児で21から22kg 11歳児で39から40kgのようで
す。これらから判断しますと、あまり問題にはならないのではないでしょう
か?
◆飲料水のタンクを掃除した後、赤い水が出たがだいじょうぶか?
A:残留塩素は基準値まで出ているので心配いりませんが、気になるようでした
らガーゼで濾して下さい。
タンクを洗った後、各蛇口を開栓したままタンクの水を一旦全部流せば、後
は赤い水は出ません。
◆コウモリが天井裏で巣を作っているようだがどうすればいいか?
A:天井裏は、コウモリの真っ黒な糞と小便臭で異臭がする。コウモリは夜行性
なので、夜巣から出かけて行って朝戻ってくる。ハエ取りリボンを仕掛けて
おくと見事に引っかかって捕捉できる。
◆ハチが巣を作っているが、退治したい。
A:アシナガバチ:ハチは殺虫剤に弱い。3mくらい薬剤が噴霧できるハチ専用
の殺虫剤があるので、それを使えば比較的容易に退治できる。万一、ハチが
こちらに向かって来てぶつかってもハチは刺さない。手で払うとハチは刺し
に来るという習性があるので、手で払う動作はしない事。
スズメバチ:刺された毒がリンパ、血管に入るとショック死する危険がある
ので、専門の業者に依頼しましょう。
◆ダニの検査で++という結果が出たが、どのように指導するか?
A:保健室の敷き布団、マットレス、放送室のカーペット、職員の更衣室のカー
ペットなどが++の結果がよく見られる場所である。過去の例だが、保健室
のマットレスをほぼ毎日掃除機で吸引し、機会がある毎に日光消毒して1年
後に測定した時、マイナスだった事がある。「マメに掃除し、空気に当てる
事でダニのいない環境を作る事ができる」という証明と思えますが。
以上のように、学校薬剤師の業務に関わっていると、様々な問題が起こります。過去にこのような事があり、対処法はこのようにしたという事例がありましたら、ぜひお知らせ下さい。