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放射線に関する研修会の報告

放射線に関する研修会

  平成23年10月28日、静岡市において文部科学省主催の「放射線に関する研修会」が、
第61回全国学校保健研究大会中に開催され、北村仙台市学校薬剤師会会長と出席し
てきましたので報告いたします。         仙台市学校薬剤師会副会長 宮川季士

                 放射線に関する研修会

                         日時 平成23年10月28日
                         場所 静岡県コンベンションアーツセンター
                         主催 文部科学省

趣旨  東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所から放出された環境中の放射性
     物質により、福島県をはじめ、全国的に子どもの健康に対する不安が生じて
     いる。このため、学校医、学校歯科医及び学校薬剤師等を対象に放射線に関
     する研修会を実施し、学校における放射線による健康影響等を含む基礎的事
     項についての講演、健康相談及び保健指導に資することとする。

研修1 「放射線と健康への影響」」 
              講師:明石真言 独立行政法人 放射線医学総合研究所理事

     東日本大震災では災害対策基本法の対象となる被害のうち複数の災害が同
    時に発生し、放射線に関しては被ばくしているかどうかもわからず、停電のため
   その測定もできなかった。被ばくの特殊性は次の8つがあげられる。
      1.低頻度の事象
      2.被ばくしたかどうかがわからない
      3.症状が出るまでに時間がかかる
      4.放射線に対する専門的知識が必要
      5.放射性物質や放射線に対する不安
      6.放射線による被ばく汚染の測定が可能
      7.滅菌・殺菌・中和ができない
      8.社会的な影響が大きい
    外部被ばくとは、放射線を遠くから浴びることをいう。この場合、患者さんの体表 
   面や体内に放射性物質はなく、その患者さんから被ばくすることはない。一方、汚 
   染とは、放射性物質が身体に付着するか、体内に摂取することをいう。この場合
   は患者さんが線源で、放射線が出ている。汚染が広がらないようにすることが必
   要。口、鼻、手指に汚染がある時は体内の汚染を疑う必要がある。福島原子力
   発電所の事故の場合は、降雨や放射性物質の空気中への放出、放射性降下物
   などの外部被ばく汚染・体表面汚染に加え、広範な環境汚染により汚染されたも
   のを経口摂取したり、放射性雲などからの吸入による内部被ばくが考えられる。
    一年間に自然界から受ける放射線は、宇宙線から+大地などから+食べ物か
   ら+ラドンガスなどの吸入が考えられ日本では約1.7ミリシーベルト(mSv)/年
   で、世界の高自然放射線地域では、3.5から10.2 mSv/年という所もある。
     日本人体重60Kgの人の体内の放射性物質は、カリウム40が4000ベクレル   
   (以下Bqと記す)、炭素14が2500Bq、ルビジウム87が500Bq、鉛・ポロニウムが   
   20Bqである。
    放射線の人体への影響は、本人のみに現れる身体的影響(主に急性障害)を
   確定的影響といい、ガンなどの晩発性障害や子孫に現れる遺伝的影響を確率的
   影響という。確定的影響では、病的状態となる「しきい線量」(それ以下では発症
   しない線量)は、被ばく者間の感受性の違いで病的状態となるしきい値は異な
   る。
    原発などの事故で放出された放射線と、天然に存在する放射線との人体に対
   する影響の差は無いが、それの持つエネルギーの性質で影響が異なってくる。
    1960年から1970年代のうち1964年がセシウム137が一番高い数値を示し
   600Bqあった。しかし、1970年代にはその1/5から1/10 まで減少している。現在、
   我々の体の中には、数十Bq存在しているはずです。

研修2  「学校で放射線を教えるためには」
          講師:米原英典
           独立行政法人 放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター
           規制科学研究プログラム プログラムリーダー

    正しい知識をしっかりと理解して、子供にわかりやすく伝える必要がある。文部
  科学省で作成した「放射線等に関する副読本」があるので小中高生徒用と教師用
  を使って、まず放射線に興味持たせ、科学的に正しい知識・基礎的な知識を得、
  線量の大きさを感覚で捉え、放射線の影響を理解し、放射線のリスクを理解させ
  る必要がある。この講演の内容は、下記のURLに掲載している放射線副読本を
  参照してください。
   放射線の基礎知識や人への影響については理解しがたい点があります。これら
  の説明は、教える方が既存の知識をそのまま一方通行で説明するだけでは、受け
  手が十分に理解することが難しいと考えられます。教え手がしっかり理解した上で
  いろんな例や図などを用いて会話で理解を確かめながら説明することが、正しい
  理解のために必要であると考えられます。また、放射線被ばくの現状が変化する
  中で、どのように被ばくから防護するかは、状況に応じて変化しています。それに
  対応するためには、表面的な知識を説明するだけでなく、基本的な原理を理解す
  るように教えることが重要です。自分自身で考えて対処する力を養うということや
  自然現象に興味を持たせるという教育的観点からも有効であると考えます。

  「放射線等に関する副読本」の掲載先
   http://www.mext.go.jp/b_menu/shuppan/sonota/detail/1311072.htm
   http://radioactivity.mext.go.jp/ja/1311072/index.html
     (アクセス集中による閲覧制約を回避するため2箇所に掲載し、下段URLでは
      種類毎に一つのファイルで掲載しています)

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